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第14話 三年前の雨②

ผู้เขียน: 花柳響
last update วันที่เผยแพร่: 2026-06-19 06:01:03
 廊下は昨日よりも明るい。窓から庭が見え、低く刈り込まれた植え込みの上に朝露が残っていた。

 昨日は気づかなかった。外を見る余裕などなかったのだ。

 書斎の扉の前で、相良さんが軽くノックする。

 中から「どうぞ」と低い声がした。

 律は窓際にいた。

 車椅子に座ったまま、机へは向かっていない。

 黒い仮面は、昨日と同じように顔の上半分を覆っている。けれど朝の光の中で見ると、その影は夜より少し薄かった。

「おはようございます」

 挨拶を口にしたものの、声は少し硬かった。

「おはようございます」

 挨拶だけで、距離が測られる。

 昨日まで知らなかった男と、これから契約上の婚約者になる男。

 どちらの距離で立てばいいのか、まだ分からない。

 私は封筒を胸の前で持った。

「これは」

「あの夜、渡せなかったものです」

 三年前。

 その言葉を、律は口にしなかった。

 それでも分かった。

 封を開ける。

 中には、二つ折りにされた名刺と、小さなカードが入っていた。

 名刺の角は水を吸ったように少し波打っている。文字は読める。

 榊律。

 榊グループ。

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